アトレティコ・マドリード戦の勝利で見えたキャリック監督の構想
マンチェスター・ユナイテッドは、プレシーズンマッチでスペインの強豪アトレティコ・マドリードと対戦し、2-1の逆転勝利を収めた。スウェーデンを舞台にしたこの一戦では、ブライアン・ムベウモがPKを含む2ゴールを挙げる活躍を見せ、チームを逆転勝利へと導いている。指揮官のマイケル・キャリックにとって、この試合は単なる調整の場にとどまらず、今夏の移籍市場における「人員整理」に向けた明確なメッセージを送る重要な機会となった。
クラブはこれまでに、ユーリ・ティーレマンス、アンドレイ・サントス、カール・ダーロウといった実力派を獲得し、着実に補強を進めてきた。しかし、8月22日に控えるハル・シティとのプレミアリーグ開幕戦に向け、キャリックが描く理想のスカッドはまだ完成していない。アトレティコ戦のメンバー選考から浮き彫りになった、今夏に退団が濃厚視される3人の動向を読み解く。
構想外が濃厚となるジョシュア・ザークツィーの去就
この試合で最も注目を集めたのが、オランダ代表FWジョシュア・ザークツィーの起用法だ。ローゼンボリ戦では1ゴール1アシストと結果を残したものの、アトレティコ戦での出場時間はわずか17分間にとどまった。キャリック監督は他のアタッカー陣の調整を優先し、ザークツィーをベンチスタートとする決断を下した。
2年前に移籍金3650万ポンド(約73億円)で加入したザークツィーだが、通算75試合で9ゴールと、期待された得点力を発揮できずにいる。クラブはすでに彼を移籍リストに載せており、今夏中の売却を画策している模様だ。現在はセリエAのユベントスが強い関心を示していると報じられており、今後の進展が注目される。
若手GKラデク・ヴィテクの売却と資金調達計画
ゴールキーパー(GK)の編成においても、指揮官の意図は透けて見える。アトレティコ戦では、ベテランのトム・ヒートンが先発フル出場を果たした一方、22歳の若手GKラデク・ヴィテクは出番なしに終わった。昨季レンタル先のブリストル・シティで評価を高めたヴィテクには、現在多くのクラブが熱視線を送っている。
マンチェスター・ユナイテッドは今夏、カール・ダーロウをフリーで獲得し、正GKセンネ・ラメンスのバックアップ体制を確立。これによりヴィテクの序列は下がり、クラブは彼の市場価値を1000万ポンド(約20億円)と評価して売却を容認する方針だ。ここで得た資金は、他ポジションの補強へ再投資される見込みとなっている。
出場機会を求めるアルタイ・バインディルの退団志望
さらに、トルコ代表GKアルタイ・バインディルはベンチ入りすら果たせなかった。試合前のトレーニングには参加したものの、キックオフ後はスタンドから戦況を見つめることとなった。キャリック監督がこの試合に帯同させたGKは、ヒートン、ヴィテク、そして若手のダーモット・ミーの3人のみだった。
2023年に430万ポンド(約8億6000万円)で加入したバインディルだが、公式戦での出場はわずか17試合。アンドレ・オナナの控えという立場に加え、昨季ラメンスが加入したことで守護神への道は事実上閉ざされた。定期的な出場を望む本人は今夏の退団を強く希望しており、スペインのセルタ・デ・ビーゴが1年間の期限付き移籍を打診しているほか、トルコの複数クラブも完全移籍での獲得を視野に動いている。
新シーズンに向けたキャリック体制の最終調整
チームは今後、パリ・サンジェルマン、リーズ、ACミランとの親善試合を控えている。これらの実戦を通じて、新戦力の融合を図ると同時に、余剰戦力の整理を加速させることになる。アトレティコ戦での采配は、ザークツィー、ヴィテク、バインディルの3人に対し、「放出容認」というクラブの意思を明確に示すものとなった。
サポーターにとっては実績ある選手の退団に寂しさもあるが、持続可能なクラブ運営とチーム再建のためには、冷徹な人員整理が避けられない。キャリック率いる新生マンチェスター・ユナイテッドが、どのようなスカッドで開幕戦を迎えるのか、移籍市場の最終局面から目が離せない。



