Add Me!Close Menu Navigation

プレミア通信|世界最高峰のプレミアリーグの最新移籍情報、コラム、試合結果、ハイライトなどをお届けします☆

Add Me!Open Categories Menu

コラム、ミドルズブラ『06−07シーズン総括 〜Southgate政権1年目の船出〜』

Middlesbrough_logo_1
 05−06シーズンをUEFAカップ準優勝というクラブ史上最高の形(優勝できればなお良かったが)で締めくくったBoro。しかし、06-07シーズン開幕前には長年にわたって指揮を執ったSteve McClaren監督がBoroとの契約期間中でありながら、エリクソン氏の後を引き継いでイングランド代表監督に就任することがすでに決定しており、後任監督問題が浮上した。

 この問題については当初簡単に解決できるものと見られていた。前シーズンはUEFAカップで決勝まで勝ち進んだ実力と運、そして優れたアカデミーから次から次へと輩出される有望な若手選手の存在は、後任監督探しにおいて魅力的な材料となるはずだからだ。

 しかし、クラブ側はMcClaren監督と共にクラブを支えたコーチングスタッフは変更したくないという方針により、その人選は難航なものとなる。

 かつてはBrian Robson元監督のあとを引き継ぎ短期間ではあるがリーグ降格の危機を迎えていたクラブの指揮を執って、プレミアリーグ残留を成し遂げたTerry Venables氏に白羽の矢が立ち、その後の交渉によって就任は確実視されていたが、高齢を理由に就任を辞退されてしまった。後任監督にはうってつけの人材と考えていただけに、この結果は痛かった。

 その後、Leicester CityやCelticの監督を務めたMartin O’Neill氏と交渉を進めたが、前述したコーチングスタッフの変更は行わないという方針が、自身の腹心たちを連れてきたいというO’Neill氏の考えにそぐわないものとして障害となり、結局交渉は打ち切り、同氏はAston Villaの監督に就任した。

 さすがに2人の監督候補からふられてしまったためにそれまでの交渉期間の長さから開幕までの準備時間が少なくなり、新シーズンに向けて不安になってくるのがファン心情というもの。その後も、Alan Curbishley氏らの名前が噂にあがってきたものの、どれも真実味の薄い話であった。

 そしてクラブが最終的に導き出した結論は、チームキャプテンであり現役選手のGareth Southgateを監督に据えるということだった。監督に必要なライセンスを持っておらず、まだ現役だったSouthgateの強引な監督起用はプレミアリーグ内外やファンに大きな衝撃を与えた。

 この決定はリーグ側に許可を取った上での発表ではなく見切り発車的な決定であり、クラブ側はこの人選に難色を示していたリーグ側の説得に苦労することとなった。結果、前監督を契約期間中に代表監督に持っていかれてしまったこと、他クラブにも監督に必要なライセンスを持ちあわせていないものが監督になっているなどの外的な要因により、超特例措置として開幕数ヵ月後までの有効期限つきで監督就任を認めることとなった。(その後、リーグやカップ戦での成績により、同シーズン終了までの指揮を認められることになった)

 昨シーズンまで選手だった人間が監督を務めるという無謀なクラブ側の決定により、ファンの間ではSouthgateの監督手腕に否が応でも注目が集まることとなった。シーズン開幕戦では、今期昇格チームであるReading相手にアウェイで2−0とリードしておきながら3失点で逆転負けを喫するという失態を披露したかと思えば、Mourinho政権下になっては先制点を挙げたゲームでは無敗だったChelseaに見事な逆転勝利をホームで挙げるなど、不安定な試合が続いた。

 特に昇格チームや下位と目されるチームに敗れてしまうことが多く、リーグ降格圏内すれすれを推移することがほとんどであった。そんな低迷を呼び込んだのは新人監督の消極的な戦術と選手の適性および実力を見抜く選手眼のなさが招いたものであった。

 消極的な戦術というのは、4−5−1という中盤の支配力を上げるのを目的としたフォーメーションを採用したことにあり、Boro自慢のフォワード陣(昨シーズンのUEFAカップ決勝進出に貢献したHasselbainkは放出)のうちVidukaをベンチに置くというものだった。守備的ポジション出身の監督らしくまずはボールをキープする時間をなるべく多くして、試合を支配したいという意図があったかと思うが、プレミアリーグ内では中盤の人数を増やしただけで選手の質が強豪クラブのように揃っていないBoroが主導権を握ることのできる相手は決して多くなかった。

 それに加えて、得点を取らなければ勝つことも引き分けですら困難なプレミアリーグの舞台に、ポストプレーや強力なシュート力などに秀でたVidukaをベンチにおいたままでは、満足な勝ち点を上げることは無理ということは明らかであったし、1トップを採用するのであれば左サイドからのドリブルからテンポを作ることが多いYakubuにとって荷が重く、Vidukaが適任であったことも付け加えなければならない。後述はするがSouthgateの選手眼の悪さを証明する一例となった。

 選手眼のなさについては、中盤の構成力を上げるためには必要不可欠な司令塔として希少な存在であったMendietaを開幕1試合に出場させただけで見切りをつけ、期待していたRochembackもうまくチーム内で機能しないことがわかると長い間起用しない冷遇ぶりから、前述の選手と比べて明らかに中盤の選手としての適性が劣ると見られるEuell(かつては中盤でプレーしていたが、フォワードとしての方が有名だった)を先発メンバーで重用するなど、ファンの目から見ても明らかな人選ミスを犯してしまっていた。

 そんな中でさらに衝撃がチームを襲った。McClaren政権下からチームを支え続けたSteve Round氏がSouthgateとの主義主張の違いから、チームを離れ兼任していたイングランド代表のスタッフに専従することとなったからだった。こんなことになるのであれば、クラブ側が監督選考の際にこだわっていたコーチングスタッフ固定の方針はなんだったんだろうかと残念に思う。つまらない一時のこだわりにより、優秀な監督候補の人材を失ってしまったことのダメージは計り知れなかった。

 かつて優勝を果たしたリーグカップにおいても、格下相手の初戦にホームで敗れるという失態を犯していたこともあり、今シーズン最大の危機を迎えるかと思ったBoroだったが、ユースチームの監督を務めていたColin Cooperをトップチームのコーチに向かえ、コーチ経験が豊富なCrossbyをアシスタントコーチに据えてから、チーム力の回復が見られつつあった。

 要因としては、夏の移籍市場期限ギリギリでReal Madridからシーズンローンで獲得できた地元出身のWoodgateが、左サイドバックからセンターバックに完全コンバートされたPogatetzとともに鉄壁のディフェンスラインを構築して失点の減少に貢献したということ、そしてフォワードを2人に増やした4−4−2のフォーメーションに固定化し以前より得点力がアップしたこと、最後にArcaの左サイドバックから中盤の中央にコンバートしたことも功を奏していた。

 アルゼンチン時代からも含めて中盤でのプレーは数えるくらいしかないと話していたArcaだったが、無理に前線へパスを出さず適格適所のパスの選択肢を持っており、アルゼンチン人選手の特徴であるスキルフルなボールキープからの球捌きは、それまで不安定な構成だったBoroの中盤に安定をもたらした。Boatengとの相性もそこそこよく、かつて同胞のZendenとコンビを組んでいたときは守備的役割になりがちだったBoatengをArcaがサポートすることで中盤が活性化した。攻撃面においてもゴール前では絶妙のポジショニングからゴールを決めて、リーグ戦においては2トップについでのゴール数となっている。確かにBoatengをRochembackと組ませるよりは機能しているように見え、Southgate監督が取った施策としては成功したといえるコンバートだったのではないだろうか。

 前述の要因によるチーム力の回復により、その後のリーグ戦ではシーズン開幕後よりかは安定した試合運びができるようになった結果、リーグ降格圏内の争いからは卒業できる順位まで勝ち点を重ねることに成功していた。いきなり選手から監督に立場が代わったSouthgateの評価としてはリーグ残留が合格点だとは思っている。

 惜しむらくは、困難な道のりながらも勝ち進んでいたFAカップにおいて、準々決勝(Manchester United戦)では健闘しながらも敗退してしまったことにより、その後の対戦クラブにもよるがうまくいけばUEFAカップ出場の可能性がなくなってしまったことが残念だった。リーグ戦では優勝が目前のUnitedが相手では致し方ない部分が大いにあるが…

 今シーズンはこのままリーグ中位で終焉を迎えてもいいと思っている。何しろ監督就任1年目だから、ファンとして多くを求めることも無理だということを理解している。来るべき新シーズンにむけて、全力を尽くさなければならないことは中核選手であるVidukaの残留である。

 幸いシーズンローンだったWoodgateはRealからの完全移籍が決定したが、もしVidukaを失ってしまうようなことがあれば、現有戦力でまかないきれない人材であるために是非とも残留させなければならない。同じアジア人として活躍を期待している李 東國は、いまだチームにフィットしているとは言い切れず、同僚からの信頼も完全に勝ち取ってはいないため、心もとない。同選手絡みで期待しているのは、888.comのスポンサー契約が今シーズン限りとなるため、高額のスポンサーフィーをもたらしてくれるような韓国企業がシャツスポンサーに名乗り出てくれないかということだ。

 新しくクラブエンブレムも代わり、シーズンチケットの売上すべてが戦力補強費にまわされると伝えられているので、本格的に自分の思うように補強できるようになったSouthgateとクラブ側の動きに注目したい所である。

 Written by manba from Boro’s Card Site

Leave a Reply




関連記事もチェック!

新着記事